学長対談
キリスト教宣教師による英学校を起源とする桃山学院は、2019年に学院創立135周年を迎えます。
1890年に高等英学校を、1902年には大阪で初となる私立中学校を開校し、1959年には桃山学院大学を開学しました。
そして、2018年4月に桃山学院教育大学がスタートしました。大きな節目を前に、桃山学院大学と桃山学院教育大学の学びの独自性と共通点、また連携の可能性について、両大学学長が語ります。

「自由と愛の精神」を礎に、次世代の人材を育んでいく
- 梶田
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情報化やグローバル化の進展などによって社会の変化は複雑で予想困難になってきています。そのような時代だからこそ、他者と協働しつつ、主体的に課題解決に取り組む力が必要で、そのような力を育む教師の力量も、これまで以上に求められています。
その点において、桃山学院教育大学がキリスト教を礎とする私立の教育大学として学びを展開できることは大変意義深いと感じます。特に桃山学院はイギリス国教会をルーツに持っています。自己をしっかり持ち、他者と対話を通じ理解し合うという精神があります。現代はどうしても世の中の動きに影響されやすい。しかし、「我々の世界」(世の中)を生きる力だけでなく、「我われの世界」(その人の独自固有な世界)を生きる力を持つことが次代を支える人材には大切であると考えています。そして、両者のバランスをとることが大切です。教育者をめざす人自身が身につけ、そして教育者として導いていく児童や生徒に伝えて欲しいと願っています。
- 牧野
- 私が桃山学院大学で実践している理念と、まさに一致していると感じます。決して利己主義ではいけないのですが、周囲を優先するあまり全体に埋もれる歯車になっては意味がない。自分の能力や個性を発揮することで社会に貢献し、さらに自分も磨かれる、といった効果を体験してほしいと思います。

学びの過程こそが人としての幅を広げる
- 牧野
- 桃山学院大学では、多様な企業や団体にご協力をいただき、現実の問題を対象として取り組む学びを進めています。それは、実践で見えてくる難しさに立ち向かい、「やりきる」ことで強い人間になってもらいたいから。だからこそ、逆境を乗り越えるプロセスに価値を感じられる。意義のある学びになると信じています。
- 梶田
- いかに体験を積むかということがポイントですね。教員免許の取得は、単位を取ればよいのではありません。教育現場で同じく「やりきる」ことを体験してほしいと考えています。教材を工夫したり、教え方を悩んだり、児童に対して「答えを見せるのではなく、理屈を教える苦労」を味わう。それを知ってこそ教員になる資格があると言えるのです。私が策定に関わった学習指導要領の次期改訂においても、学びの過程を質的に高め、「主体的・対話的で深い学び」を実現することを大切にしています。

「桃山学院」で育った学生たちが拓く未来
- 牧野
- さまざまな人と関係を築くこと。その相手は、海外の方も含まれることが当たり前の時代です。
- 梶田
- 日本人が海外へ出るばかりでなく、日本社会で暮らす外国人も増加し、「多文化共生社会」を見据えた教育のグローバル化は一層進むでしょう。地球全体がキャンパスになると思っています。
- 牧野
- 桃山学院大学は、世界24の国と地域、58の大学と協定を結んでいます。この関係を、両大学で活かしたいと考えています。
- 梶田
- そうですね。桃山学院大学の交換留学生と連携したプログラムなど、教育者を目指す学生にとっては、貴重な体験となるでしょう。グローバル化をはじめ、学びのプロジェクトやクラブ活動など、ルーツが同じ両大学の連携はとても大切です。
- 牧野
- ぜひお互いの強みを生かし、「桃山学院」らしい人材育成を進めていきましょう。
- 梶田
- 多様な体験学習を通じて世界の市民を養成する桃山学院大学と、自らの価値観をしっかり確立させた教育者を養成する桃山学院教育大学。その礎となる桃山学院としてのキリスト教による「自由と愛の精神」の実践が、社会に貢献し、社会をよりよく発展させていく原動力になることを願っています。
PROFILE

梶田 叡一
桃山学院教育大学 初代学長
京都大学文学部哲学科心理学専攻卒、
文学博士。教育心理学者。

牧野 丹奈子
桃山学院大学 学長
大阪大学工学部環境工学科卒業、
大阪大学大学院経済学研究科
博士(経営学)。